今日はTRAMONTANAの看板料理のストーリーの紹介です。
「ルーコラとピスタチオペーストのコンキリエ」
この料理を覚えた場所は、イタリアに修行の最初に選んだ場所フィレンツェ。
そこで初めて働いた店のシェフがジュリアーノ、全く言葉も解からずなかなか
仕事を見つけられず直接交渉で13件目にやっとスコットランド人オーナーの
経営する150席の食堂でどれだけ仕事が出来るのか1ヶ月無給で試され
無我夢中でジュリアーノに付いて働き、やっと本契約に漕ぎ着けた直後に
事件は起きた!
一ヶ月の期間で店のメニューを全て作れるようになった僕に突然
「俺の知り合いで、お前の好きな郷土料理の店をこの近くでやってる
女性オーナーシェフがお前を欲しがってるんだけど行くか?」
と、切り出してきたジュリアーノ。
『僕はジュリアーノに付いて働けて満足だからここで働きたいよ』
と返事したらジュリアーノは何とも言えない感じだった。
そして数日後、
「明日歯医者に行くから明日はお前がみんなの賄いを作ってくれるか?」
とジュリアーノに聞かれ
『勿論出来ます!』
と答え、次の日賄いが終わってもジュリアーノは来ない。
とうとうディナーが始まってしまい、いつもジュリアーノとやっていた
プリモピアットとセコンドピアットを洗い場のロランドのサポートを受け
なんとか2人で営業終了。
そのまま2週間、ジュリアーノ不在のままロランドと2人で
キッチンを切り盛りした後もジュリアーノは帰ってこず
良いシェフが見つからずに自分より若い頼りないシェフのサポートをしながら約1年間その店で
この店で働き大変な思いをしたけれど、
ジュリアーノは僕に素晴しい贈り物を残していってくれた。
ルーコラと松の実ペーストのペンネ
僕は彼のこの一皿がお気に入りで、今はこの一皿を自分流にして
ルーコラとピスタチオのペーストを作って貝殻型のパスタ「コンキリエ」で作っている。
僕個人の好みではルーコラの清々しさにはピスタチオの優しい甘さとマッタリしたコクが好きだ。
そして僕はフィレンツェのこの店で1年間の仕事をして、
資金も尽きヘトヘトになったので一度帰国して体制を立て直そうと
退職を申し出た直後にピッツァイオーロからジュリアーノが今
働いている店の情報を得て、電車で30分かけてジュリアーノの働いている
小さな街の食堂に食事に行き
ジュリアーノの料理を食べ終えた後、キッチンに入って行った。
『チャオ ジュリアーノ!今日も美味しかったよ。』
突然行ったので、幽霊でも見たかのように目を見開いて驚くジュリアーノ、
「おまえ、まだイタリアに居たのか?」
『うん!あれから大変だったけどあの店で1年間働いたんだ、短い期間だったけどジュリアーノと働けて本当に良かったよ。
もう、日本へ帰るから今日はジュリアーノに挨拶に来たんだよ!』
ジュリアーノは少し涙ぐんで力強く握手をし、お別れとお互いのこれからの幸福を願った。
ありがとうジュリアーノ、あれから10年以上経ったけど今も元気にしてるかな?